スタッツ解析・分析シリーズ(3) 伝統的な旧来からのゴルフのスタッツが抱える問題点とは?

ゴルフは様々な環境、場所でプレーし、なおかつトーナメントでは18ホールで同時に70名がプレーすることもあり、スタッツ、データによる解析がなかなか発展しませんでした。

野球、テニスなどのスポーツでは1つのボールをトラッキング(追跡)することでデータなどを集積できますが、ゴルフは70個のボールを追いかけないといけないためです。

そのため旧来からの紙とペンで集計できるスタッツが大勢を占めているのですが、これらのスタッツは様々な問題を抱えています。

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旧来からのスタッツで正確に選手の力量や調子を知ることができない

結論的に言えば、「どのプレーがその選手の強みであり長所であるのか、また弱みである短所であるのかということを正確に把握できない」ということです。

その結果、必要な練習、不要な練習などを適切に見出すことができないので、効率的・効果的な練習をする上で、旧来のスタッツが役立たないということです。

大きくは2つのことが理由で、その問題が生じています。

  1. 1打のプレーの内容、質の違いを把握できない
  2. あるショットのスタッツが他のショットの影響を受けてしまう

1つ目の問題ですが、ある試合でパーオン率が60%が数人いた場合には、数字上はその質や内容の違いを見出すことができず、どの選手のショットが良かったのかを把握することはできません。

同じパーオン率であったとしても、グリーンは捉えていたものの10m以上の距離を残したのか、それともピンそば3m以内にボールがとまったのか?といったことはスコアに直結する大きな違いですし、ショットの調子や選手の技量を知る上でかなり重要な要素なのですが、そのことは一切反映されていません。

またフェアウェイキープ率もフェアウェイにいった回数を示してはいるものの、どれくらいの飛距離が出ているのか?そしてフェアウェイを外してしまった時の問題は全く考慮されず、どれくらい曲げてしまったのか?といったようなティーショットの技量に関わる問題を把握することはできません。

そのため選手のティーショットの調子や技量を正確に知ろうとしても、フェアウェイキープ率という数字では一部分しか知ることができません。

パッティングには旧来からのものとして総パット数、パーオン時の平均パット数などがありますが、これらもこういった質の違いを数字から割り出すことができません。

総パット数はそのラウンドで打ったパットの回数を合計したものですが、2mからの2パットも10mからの2パットも同じ2パットとして集計してしまいます。

パットの難易度としては2mよりも10mからの方が難しくなるため、同じ2パットでも価値と意味が大きく違います。しかし、総パット数ではそれが把握できません。

そして総パット数の問題点はバーディが多くなることで減るのですが、一方でグリーンを外してからの寄せて1パットの回数が増えることでもその数が減ってしまうことです。

そのため同じ28パットという数字が出たとしてもバーディチャンスからなのか、それとも寄せワンなのかによって、内容には大きな違いありますが、それは全く反映されません。

パーオン時の平均パットは、バーディチャンスの時にどれくらいの割合で決めることができたかを把握することはできるのですが、そのバーディパットが1mなのか、それとも10mなのかというような長さは全く考慮されていません。

さらに問題なのはパーオンできなかった時のパット数が除外されていることです。

いわゆるボギーオンして3パットした場合、総パット数には反映されるものの、パーオン時の平均パット数の集計対象外となってしまっています。

このように総パット数やパーオン時の平均パット数といった昔ながらスタッツで数字を見ても、本当にパットの調子が良かったのかどうかを把握できないという問題があります。

2番目にあげられる問題点としては、あるショットのスタッツが他のショットの影響を受けてしまうということです。

パーオン率が60%だった場合に、フェアウェイキープ率が80%の選手と40%の選手とではその意味が大きく異なります。

フェアウェイから打つほうがグリーンを正確に捉える確率が高いため一般的にパーオン率が高まっていきますので、パーオン率はフェアウェイキープ率に少なからぬ影響を受けています。

パーオン率が80%だと「アイアンの調子が良いのかな?」と捉えられることが多くなりますが、フェアウェイキープ率が高く、飛距離が出ていたので、セカンドをショートアイアン、ウェッジで打てるがゆえに高いパーセンテージになった可能性があります。

またティーショットを大きく曲げてしまいOBやハザード、もしくはフェアウェイにレイアップするだけになった場合はパーオンが難しくなりますので、当然パーオン率が下がります。

このようにティーショットの影響を受けているパーオン率では、正確にその選手のアイアンの技量や調子を知ることができないという問題があります。

それはパッティングも同様です。

パーオン時の平均パット数は、グリーンにのってからのファーストパットの距離に大きく影響を受けていますので、パー4であればセカンドショット、パー3であればティーショットの精度に大きく左右されます。

そして総パット数はグリーンを外した時のアプローチの上手さに左右され、リカバリーが上手い選手はパットが上手くなくても、その数字を減らすことができます。

このように紙とペンで集計できる伝統的な旧来からのショットとパットのスタッツは、その前のショットの結果に影響を受けることが多く、正確にその選手のアイアンやパターの技量を示すことができていません。

旧来のスタッツの弱点はストロークスゲインド(Strokes Gained)が優れていると言える理由に

「稼いだ打数」という新しい概念であるストロークスゲインド(Stroke Gained)を開発したコロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブローディ教授はジョンディアクラシック2015でのダスティン・ジョンソンを例にして以下のように話しています。

Through the John Deere Classic, he is ranked very high in putts per round and putts per green in regulation and very low in strokes gained: putting. He is second in putting average (putts per GIR) and 13th in putts per round and, in strokes gained: putting, he’s ranked 125th. Those are huge differences.
One says he looks like the best putter on TOUR and one says he is below average, and which would you believe? I think most people who have seen Dustin Johnson play would believe the strokes gained: putting over the other statistics.
There’s a simple reason for that. He’s such a good ballstriker, and has such a good short game, that his putts start way closer to the hole than an average TOUR player, so he takes fewer putts and he takes fewer putts per greens in regulation not because he’s a better putter but because he’s starting closer to the hole.

引用元:PGA TOUR.com Q&A with the godfather of golf analytics

管理人訳:『ジョンディアクラシックで、ダスティン・ジョンソンは「総パット数のラウンド平均」と「パーオン時の平均パット」でかなり上位となったが、ストロークスゲインド・パッティングではかなり下位にランクされた。「パーオン時の平均パット」ではフィールド全体で2位、「総パット数のラウンド平均」で同13位だったが、ストロークスゲインド・パッティングでは125位となった。これはとても大きな違いだ。
ある人は彼のパターはPGAツアーでベストだというし、ある人は平均以下だというだろうが、そのどちらを信じますか?ダスティン・ジョンソンのプレーを実際に見ていた人たちは、他のスタッツよりもストロークスゲインド・パッティングの方を信じるだろう。
その理由はとても簡単だ。彼は平均的なPGAツアーの選手たちよりも、より短い距離でパッティングができるくらい素晴らしいボールストライカーで、素晴らしいショートゲームを持っているからだ。彼が「総パット数のラウンド平均」と「パーオン時の平均パット」の数字が良くなるのは、彼のパターが良いからではなく、短い距離につけることができるからだ。』

ダスティン・ジョンソンは飛距離が出るため、他の選手がロングアイアンで打つ距離でもショートアイアンで打つことができ、よりスピンをかけ、コントロールすることができます。

その結果、ピンに近い距離のバーディチャンスを多く作ることができるため「総パット数」も「パーオン時の平均パット」も少なくできます。

またグリーンを外したとしてもショートゲームが上手いため、きっちりとピンに寄せて1パットで切り抜けることができるため「総パット数」が少なります。

このように紙とペンで集計できる旧来からのスタッツでは、選手のショットやパターの実力や技量を正確に把握することができません。

そのため前回の記事で紹介したノースウエスタン大学のヘッドコーチであり、ルーク・ドナルドのコーチでもあるパット・ゴスは「紙で集計するスタッツは役に立たない」からと、選手たちに集計させていないそうです。

このように旧来からのスタッツには問題があるわけですが、それを大きく改善させたたのがストロークスゲインド・ティー・トゥ・グリーン(ショットで稼いだ打数)、ストロークスゲインド・パッティング(パッティングで稼いだ打数)らのスタッツです。

次回からはそのストロークスゲインド(Strokes Gained)について見ていきたいと思います。

この記事に関連するシリーズの記事は以下のとおりです。

  1. バウンスバックと優勝に因果関係はあるのか?2014-15シーズンのPGAツアーの優勝者のデータで検証
  2. パッティングと優勝の関連性は?2014-15シーズンのPGAツアーの優勝者のデータで検証
  3. スタッツ解析・分析(1) ゴルフにおいてスタッツによる分析・解析が重要な理由とは?
  4. スタッツ解析・分析(2) データ・指標分析を重視し選手を指導している世界のプロコーチたち
  5. スタッツ解析・分析(3) 伝統的な旧来からのゴルフのスタッツが抱える問題点とは?
  6. スタッツ解析・分析(4) PGAツアーの距離別のパット数の平均値とストロークスゲインド(Strokes Gained)

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2 Responses to “スタッツ解析・分析シリーズ(3) 伝統的な旧来からのゴルフのスタッツが抱える問題点とは?”

  1. lav より:

    SGPもまだまだ補正が必要になるかもですね。
    ラウンドごとに、グリーンオンした地点がどのエリアで、そこから何パットで決めるべきかの難易度による係数補正したスタッツがあれば、また更にパットの得意度がわかるかもしれないですね。
    難易度が高いところから1パットならプラス補正、難易度が低いところから2パットならマイナス補正。

    当然、パットの難易度が低いところにグリーンオンしたら、SGTのプラス補正だし、パットの難易度が高いところにグリーンオンしたらマイナス補正みたいに。

    なんでそんなこと思いついたかというと、ふと去年の全米オープンで、グリーンの各エリアからのバーディ率とか測ってたなと思い出したんで

    • golf より:

      lavさん、コメントありがとうございます。 木曜日から土曜日午前にかけて、どうしても外せない用事があったので、返信が遅くなりました。
      次回以降に書く予定でしたが、現在のストロークスゲインドは距離別でやっているので、その点では完璧ではないと思います。
      ただ、どのスポーツでも言えることですが、あまりにも細密な状況ごとの分析というのは難しいのではないかなという気がします。
      グリーンのどの位置が難易度が高いという補正をかけるにしても、その補正率の根拠がいるわけですが、それを割り出すのが簡単ではないという気がします。
      ストロークスゲインドも完璧ではないですが、やりベターなスタッツで、現状ではベストかなと私は考えています。

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