石川遼の過去4シーズンのスタッツで見るPGAツアー復帰に向けての課題

Stats and Data_Catch

石川遼が故障離脱した後、PGAツアーのメディカルテクステンション(公傷制度)を申請し、承認されたことを受けて、リハビリとして日本国内ツアーから復帰を果たしています。

RIZAP KBCオーガスタ、フジサンケイクラシック、ANAオープンの3試合の内容などを見て、2016-17シーズンの開幕戦であるセーフウェイオープンから復帰するかどうかを判断すると複数のメディアでは報じられています。

その石川遼のPGAツアー復帰に向けての課題を過去4シーズンのPGAツアーのデータ、スタッツを中心に見ていきたいと思います。

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1. ストロークスゲインド(Strokes Gained)について

近年PGAツアーに登場した新しいスタッツがストロークスゲインド・ティー・トゥ・グリーン(SG: TEE TO GREEN)、ストロークスゲインド・パッティング(SG: PUTTING)、ストロークス・ゲインド・トータル(SG: TOTAL)でした。

このスタッツによってわかることを完結に述べると「ストローク数により、ツアーの平均的な選手よりもどれだけ優れているか、もしくは劣っているか」ということです。

ショットで平均的な選手よりも打数をゲイン(gain:稼げている)している選手はストロークスゲインド・ティー・トゥ・グリーンがプラスになり、逆にこちらで打数をロス(loss:失っている)している選手はマイナスになり、ストロークスゲインド・パッティングも同様です。

ストロークス・ゲインド・トータルはPGAツアーの平均的な選手よりも、どれだけ良いスコアもしくは悪いスコアでラウンドをプレーしているかを示しています。

この平均的な選手よりもどれくらい優れているかを数値化することで、その選手が優れているのか劣っているのかどうか、さらにどの程度優れていたり、劣っているのかを判断するという手法で、すでに野球のセイバーメトリクスなどでは一般的な考えです。

これをゴルフに持ち込んだのがコロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブローディ教授です。

さらに今年のシーズン半ばから新たにストロークスゲインド・ティー・トゥ・グリーン(SG: TEE TO GREEN)を細分化した、オフ・ザ・ティー(SG:OFF-THE-TEE)、アプローチ・ザ・グリーン(SG: APPROACH TO THE GREEN)、アラウンド・ザ・グリーン(SG: AROUND THE GREEN)が導入されました。

旧来の紙ベースで集計できるスタッツ、データよりも選手の実態を詳細に知ることができる画期的なスタッツで、選手のどの分野が優れ、どの分野が弱点となっているかを、より正確に知ることができるようになりました。

このストロークスゲインドを中心で石川遼のPGAツアーのこれまでの4シーズンを振り返り、今後の克服していくべき課題について見ていきます。

2. ストロークスゲインド(Strokes Gained)で見る石川遼の4シーズン

石川遼がPGAツアーに本格参戦した2013年以降の4シーズンの主要スタッツは以下の表のとおりとなっています。

Ryo Ishikawa_Strokes Gained_2013-2016_Original

2016年は規定試合数に到達していないため順位はありません。

この4シーズンのストロークス・ゲインド・トータル(フィールドの平均との差)を見ると、2013-14シーズンに+0.323(73位)となった以外はPGAツアーの平均を上回ったことがありません。

特に2016年は6試合だけですが、そのストロークス・ゲインド・トータルは-1.370と大きく平均を下回るなど、成績が低迷したことが反映されていました。

2013-14シーズンはPGAツアーにおいての石川遼のベストシーズンとなっているのですが、その結果どおりにティーショットのスコアへの貢献度を示すストロークスゲインド:オフ・ザ・ティー(SG:OFF-THE-TEE)以外はプラスです。

これらの数字を見たところ、わかるのは課題はティーショットで、武器となっているのはグリーンへの30ヤードを越えるアプローチショットとグリーン周りのショートゲームとなります。

パー4とパー5のティーショットのスコアへの貢献度を示すストロークスゲインド:オフ・ザ・ティー(SG:OFF-THE-TEE)は1年目は+0.110(78位)とプラスになりましたが、翌シーズンから-0.259(148位)、-0.408(168位)、-0.399(–位)といずれもマイナスになっています。

2013-14シーズンはストロークスゲインドのスタッツの中で唯一のマイナス、2014-15シーズンではショットのスタッツの中で唯一マイナス、2015-16シーズンも大きくマイナスで、プレー全体の中で足を引っ張っている部門となっています。

2013-14シーズンと2014-15シーズンはアプローチとショートゲームなどでそれをカバーすることで、ショット全体の貢献度を示すストロークスゲインド・ティー・トゥ・グリーン(SG: TEE TO GREEN)がプラスになりました。

ところが2015-16シーズンではティーショットも良くなかったのですが、それ以上にアプローチとショートゲームが悪くなってしまい、6試合で55ポイントしかフェデックスカップ(FedExCup)ポイントを稼ぐことができなかった原因となっています。

30ヤードを越えるグリーンへのアプローチショットのスコアへの貢献度を示すストロークスゲインド・アプローチ・ザ・グリーン(SG: APPROACH TO THE GREEN)は-0.647と大きくマイナスで、ショートゲームのスコアへの貢献度を示すストロークスゲインド・アラウンド・ザ・グリーン(SG: AROUND THE GREEN)は-0.454とこちらも大きいマイナスとなっています。

ティーショットからグリーン周りまで全てのショットのスタッツがマイナスとなりましたので、苦しまざるを得ませんでした。

2015-16シーズンに向けて飛距離アップを目指し、シャフトを重くするなどしました。その結果、飛距離はサンプル数が少ないもののドライビングディスタンスが306.2ヤードと伸びた一方で、フェアウェイキープ率は49.58%とかなり悪い数字となっています。

またその影響はアイアンに大きく現れてしまい、これまで武器だった部門までスタッツが落ちてしまいました。

このような状態からPGAツアーを故障離脱し、復帰を目指している途上にある石川遼です。

PGAツアーでのスタッツを見ると、明確な課題はティーショットで2013-14シーズン以降はスコアメイクにおいてマイナスとなっています。

飛距離が出たほうがストロークスゲインド:オフ・ザ・ティー(SG:OFF-THE-TEE)は良くなるのですが、フェアウェイに行かずにラフやバンカーにいくことで、それ以上に数字が落ちます。

またそれよりも大きく悪影響を与えるのがウォーターハザード、アンプレ、ロストボール、OBなどです。曲げた時に最小限のところにボールがとどまれば良いのですが、曲がり幅が大きいとすぐにダブルボギー、トリプルボギーにつながるのがPGAツアーのコースの恐ろしさです。

日本のコースのように両サイドが丘陵になっていて曲げても傾斜で戻ってくるというようなコースはほとんどなく、PGAツアーの多くのコースはフラットな場所にあるため、曲げれば果てしなく曲がっていってしまい、大きなミスとなるためです。

ティーショットをどれだけ曲げてしまっているかを示す数字がPGAツアーにはあります。”DISTANCE FROM EDGE OF FAIRWAY”というスタッツで、フェアウェイのエッジからどれくらい離れた距離にボールが行ったかを示すスタッツです。

そのスタッツの推移は以下のとおりとなっています。

  • 2013:27′ 8″ – 109位
  • 2013-14:33′ 0″ – 172位
  • 2014-15:30′ 4″ – 147位
  • 2015-16:34′ 5″ – 対象外

2015-16シーズンは飛距離は伸びたものの、フェアウェイキープ率が一気に低下し、その上、曲がっている幅も大きくなってしまったことがわかります。

3. PGAツアー復帰に向けての改善点・課題は?

KBCオーガスタでは見事に優勝を飾り、日本ツアー14勝目を上げたことは、復帰に向けて良い流れを作る上で価値が有るものと言えます。

その一方で世界的にレベルが高いとは言えない日本ツアーと日本のコースを舞台に、フェアウェイキープ率が37.5%と低い数字で68名中54位タイ、パーオン率は59.72%で34位タイというのは、PGAツアーで戦うには厳しさを感じさせる数字と言えます。

特にティーショットは288.63ヤードで24位と特別に飛距離が出ていないのですが、フェアウェイキープ率が30%台というのは気になるところです。

第2ラウンドのフェアウェイキープ率は64.29%と比較的安定していたのですが、第1ラウンドは14.29%(2/14)、最終ラウンドは21.43%(3/14)と極端に低い数字となっています。

良いショットにはチャンス、悪いショットにはペナルティというリスクと報酬の色合いが強いPGAツアーのセッティングでは、かなり厳しくなっていたことが予想される数字です。

数字の悪さは風の影響があったことは否定出来ないのですが、いずれもフィールド全体の順位も良い方ではありませんので、良かったとも言い難いものがあります。

日本ツアーで良い成績をおさめても海外での好成績につながらないというのは、日本国内ツアー(JGTO)とトーナメントが開催される国内コースの抱えている問題のひとつです。

石川遼は昨年日本ツアーで7戦2勝と素晴らしい結果を残しました。

しかし、ANAオープンの優勝の後のPGAツアーではフライズドットコムオープンで予選落ち、シュライナーズオープンで50位タイ、CIMBクラシックで35位タイに終わりました。

そして日本に戻った後、カシオワールドオープンで2位、ゴルフ日本シリーズJTカップで優勝と好成績でしたが、年明けのPGAツアーではソニー・オープン・イン・ハワイではセカンドカットとなり最終日はプレーできず、その後のキャリアビルダチャレンジ、ウェイストマネジメント・フェニックスオープンと2戦連続予選落ちしています。

2015-16シーズンの最高成績が35位タイとなっているのですが、そのCIMBクラシックはマレーシア開催でトッププレイヤーが多く回避し、地元選手やアジアンツアーからも10名以上が出場するなどフィールドが薄めになる上に、フルフィールドが77名で予選落ちがありませんでした。

これからも飛距離にこだわっていくというようなコメントがメディアでは見かけられます。ですが、飛距離に関してはPGAツアーでは平均的なレベルとはなりますが、飛ばないというわけでもありません。

飛距離があまり出ない選手では、マット・クーチャー(285.9 yds / 143位)、ルーク・ドナルド(282.7 yds / 159位T)、ライアン・ムーア(282.5 yds / 161位)、ジム・フューリック(281.8 yds / 164位T)、グラエム・マクダウェル(280.9 yds / 170位T)、ザック・ジョンソン(280.0 yds / 178位)、ケビン・ナ(279.4 yds / 180位)となどがいます。

これらの選手は飛距離の不足を、ティーショットの精度(フェアウェイキープ率)、もしくはアプローチショット(パーオン率/プロキシミティ・トゥ・ホール)の精度などで補うことで、PGAツアーでトップクラスを維持しています。

距離が出る方が有利と言われたオリンピックのコースで、マット・クーチャーが銅メダルをとったことは記憶に新しいところです。

レギュラーシーズンのポイントランクで9位と上位になったケビン・ナは、石川遼と体格も同様ですが、飛距離では完全に劣っています。

ですが、ストロークスゲインド・アプローチ・ザ・グリーン(SG: APPROACH TO THE GREEN)が+0.865で3位と、ロングアイアン、ミドルアイアンの精度で補うことで、24戦で2位2回、3位2回、トップ10が8回というハイレベルの成績を残しています。

そのため飛距離を他の部門で補いながらPGAツアーでトップクラスになることは可能ではあります。

ですが、石川遼は飛距離にこだわるという姿勢を貫くというスタンスのようです。

そのため今後は、日本でのリハビリ出場の間に、ティーショットの飛距離を伸ばしながら精度を高めることができるかどうか。

距離の短い日本のコースでは、PGAツアーで重要になるロングアイアンやフェアウェイウッドの精度を要求されることは少ないため、日本では調整しにくいとは思いますが、元々の武器であったアプローチショットの精度が高まるかどうかも、復帰後のPGAツアーで成績を残すための重要なポイントとなりそうです。

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7 Responses to “石川遼の過去4シーズンのスタッツで見るPGAツアー復帰に向けての課題”

  1. toki より:

    golfさん、石川選手の情報分析ありがとうございます。
    日本での成績(あのゴルフ内容で優勝してしまうのですから…)は、全くあてにならないことが良く分かります。
    golfさんのおっしゃる通りで、石川選手や彼のスタッフは、ケビン・ナの戦い方は大いに参考になると思いますが、視野に入っているのでしょうか?。
    試合数が少なる16-17シーズンのPGAで、シード権を期待する者として心配でなりません。

  2. golf より:

    tokiさん、コメントありがとうございます。
    日本と海外では要求されるプレーの質が異なり、日本で勝つ確率を高めるプレースタイルとアメリカで勝つ確率を高めるプレースタイルが異なるのが、今の現実ではないかと思います。
    飛距離を伸ばして、しかも精度を一定水準以上にするにはリハビリの試合数は少ないかなと思いますし、PGAツアーに復帰したあとの猶予は19試合程度であることを考えると、間に合うのかなというのは懸念されます。もちろん日本を主戦場にしてやっていくというのであれば、先週のプレーで全く問題がないですし、世界ランクも上げることができてメジャーにも出場しやすくなると思います。ただ、同時にメジャーやWGCで勝てるようになるのは難しくなる気がします。
    ケビン・ナのような成功例もありますし、石川遼本人もアイアンが武器で、これが切れている時は好成績をおさめていましたので、それを活かしたプレースタイルが個人的には良いと思います。が、ドライバーと飛距離にこだわるようなので、それが限られた期間内で間に合うのか注目しています。

  3. テシ より:

    石川選手の記事ありがとうございます。石川選手はstrokes gainedを見るとティーショットの精度を高め、是非pgaツアーで優勝してもらいたいですね。

    記事とは別の質問なのですが、strokes gainedについて自分でも調べているのですが、1打辺りのプロとアマチュアの詳細なデータが載っている論文やサイトなど知りませんか?
    データ革命の本や著者の論文を読んだのですが、ザックリしたものであったので、ショットリンクやゴルフメトリクスでわかったプロとアマチュアの距離別の平均打数が知りたいな思ったのですが、もし知っていましたら教えていただけませんか?

  4. golf より:

    テシさん、コメントありがとうございます。
    テシさんが英語に抵抗がないのであれば、アメリカのマーク・ブローディ教授のホームページを読んだり、Twitterのアカウントをフォローしてみたりすると良いと思います。Twitterで直接質問するのもひとつの手だと思います。
    以下のページはマーク・ブローディ教授のホームページです。ここでもゴルフについて英語ではありますが、読むことができます。

    http://www.columbia.edu/~mnb2/broadie/research_golf.html

  5. テシ より:

    わざわざサイトを教えていただきありがとうございます。
    英語力には自信がありませんが、勉強してみたいと思います。

    今後もその他の記事を含めて更新を期待しております。この度はありがとうございました。

  6. マーク より:

    石川はまだ飛距離のことを言ってますか。重くしたシャフトは元に戻していたように思いましたが。。日本での勝利は弾みにはなりますが、PGAでの活躍を保証するものではく、その為に必要なものは飛距離ではないことに彼自身が気付いての優勝だと思ってました。私の勘違いでしたか。。
    彼のコメントなど、もう少しよく観察したいと思います。

  7. golf より:

    マークさん、コメントありがとうございます。
    キャリーで290ヤードの300ヤードという飛距離を出したいと話していましたね。飛距離を出すために、色々とまた試すのかもしれませんが、どうなっていくのか注目しています。

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