松山英樹のファンの方にはすでにお馴染みの情報となるのですが、2012年8月に日本人として初めて世界アマチュアゴルフランキングの1位になったことがあります。
これがどれだけの快挙であるかということが、あまり日本メディアで報じられていないため、今さらながらの感はありますが、松山英樹が成し遂げた世界アマチュアゴルフランキング1位の価値について見ていきたいと思います。
アマチュア世界ランク1位になった29名の1人が松山英樹
世界ゴルフランキングが選手の実力を示す指標の一つで定着し、さらに世界のゴルフ四大トーナメント、ゴルフ世界選手権シリーズ(WGC)の出場資格ともなるなど、さらに重要度が増しています。
その世界ゴルフランキングとは別に、世界のアマチュアゴルファーをランキングする世界アマチュアゴルフランキングというものが存在します。
世界アマチュアゴルフランキングは全英オープンの主催者であり、アメリカとメキシコ以外のゴルフを管轄する組織であるR&Aによって創設されたシステムです。
世界各国の選手の実力を示す指標として、このアマチュア世界ランキングが2007年1月23日に導入されています。
このランキングは2600にものぼる数のアマチュアトーナメントとアマチュア選手が出場したプロトーナメントが、ポイント加算の対象となり、対象となる期間は直近の52週間のみで運営されてきましたが、2016年から104週に移行中となっています。
松山英樹は2012年8月1日までの1年間(52週)で一番高い平均ポイントを獲得することで、アマチュア世界ランク1位に輝いたことになります。
この世界ランキングシステムが導入されてから、膨大な数になる世界中のアマチュアゴルファーの中で、世界ランク1位になった選手はわずかに29名(2016年8月23日時点)のみです。
その29名は以下のとおりとなっています。
- ジョン・ラーム(60 Weeks)
- パトリック・カントレー (55 Weeks)
- ピーター・ユーライン(49 Weeks)
- クリス・ウィリアムス(46 Weeks)
- オリバー・シュナイダージャン(41 Weeks)
- リッキー・ファウラー(36 Weeks)
- ダニー・リー(34 Weeks)
- マシュー・フィッツパトリック(21 Weeks)
- ニック・テイラー(20 Weeks)
- ジェイミー・モール(18 Weeks)
- マテオ・マナセロ(18 Weeks)
- パトリック・ロジャース(16 Weeks)
- マーベリック・マクネリ(13 Weeks)
- ダニエル・サマーヘイズ(12 Weeks)
- ジェイミー・ラブマーク(8 Weeks)
- ビクター・デュビッソン(8 Weeks)
- チェンツアン・パン(8 Weeks)
- コリー・ペイビン(6 Weeks)
- コルト・ノスト(5 Weeks)
- スコット・アーノルド(5 Weeks)
- ジン・チェン(5 Weeks)
- ジョーダン・スピース(5 Weeks)
- リッチー・ラムセイ(2 Weeks)
- モーガン・ホフマン(2 Weeks)
- デビッド・チャン(2 Weeks)
- 松山 英樹(1 Week)
- ローリー・マキロイ(1 Week)
- マイケル・トンプソン(1 Week)
- ブレイディ・ワット(1 Week)
ロリー・マキロイ、ジョーダン・スピース、リッキー・ファウラーといった世界のエリートプレイヤーたちとともに松山英樹が名前を連ねています。
数えきれないほどのアマチュアプレイヤーの頂点に立ったということは、やはり素晴らしいことです。
でも、たった1週間ではないか、と思うかもしれません。
しかし、日本のゴルフ界は世界アマチュアランキングのポイントが非常に稼ぎにくい環境であることを考えれば、これがどれだけ素晴らしいことであるかがわかります。
松山英樹が不利な日本でプレーしながら世界ランク1位になれた理由
日本のアマチュアが世界ランキングのポイントを稼ぐのが極めて難しい環境です。そうなっている主な理由は以下のものがあります。
- 世界ランキングの対象試合が少ない
- 世界ランキングのポイント計算の対象となる「フィールドの強さ」のランクが低い
一つ目の問題ですが、世界アマチュアゴルフランキングの公式サイトによると2012年に日本のアマチュアトーナメントで、世界ランキングの対象となったのはわずかに25試合しかありませんでした。
しかも、これは地域別のアマチュアトーナメントもすべて含めたもので、実際に出場できる試合数はかなり少なくなっています。
一方のアメリカは964試合もあります。
このように日本のゴルフ環境は、アマチュア世界ランキングのポイントを稼ぐ機会が極端に少なく不利な環境です。
さらにポイントの付与は出場するトーナメントの格によって左右されますが、これも日本のアマチュアトーナメントは高くありません。
アマチュア世界ランキングでは、フィールドのレベルによりAからGまでのランクに分けられていて、さらにその上に「エリート(Elite)」、そして「プロ(Pro)」というカテゴリーがあります。
このランク分けでは、残念ながら日本のトーナメントのランクは低くなっています。
2012年はアメリカではエリートが全米アマの1試合、Aが23試合、Bは56試合も開催されています。
一方の日本は最高峰と言える日本アマチュアがC、他にTopy Cupと日本学生ゴルフ選手権がともにCにとどまり、それ以外はFとなるなどポイントを稼ぎにくいトーナメントばかりとなっています。
では、松山英樹がこの環境が良いとは言えない日本でプレーしながら、どのようにして世界ランク1位になることができたのでしょうか?
それは(1)プロのトーナメントで結果を残し活躍したことで推薦出場をもらえた、(2)アマチュアの世界レベルの大会に出場するなどハイレベルの成績を残していた、(3)日本の数少ないポイントが高めのアマチュアトーナメントで結果を残したこと、などが理由として挙げられます。
松山英樹が2012年8月2日に世界ランク1位になるまでの1年間に出場した、アマチュア世界ランキングの対象となった試合の結果は以下のとおりとなっています。年の横の数字は週(Week)です。
- 2011/34 世界大学ゴルフ選手権(B) 男子個人金メダル/団体金メダル
- 2011/35 日本学生ゴルフ選手権競技(C) 優勝
- 2011/40 アジアアマチュアゴルフ選手権(Elite) 優勝
- 2011/42 日本オープンゴルフ選手権競技(Pro) 44位T
- 2011/46 三井住友VISA太平洋マスターズ(Pro) 優勝
- 2011/47 ダンロップフェニックストーナメント(Pro) 43位T
- 2011/48 カシオワールドオープンゴルフトーナメント(Pro) CUT
- 2011/49 ゴルフ日本シリーズJTカップ(Pro) 21位
- 2012/02 ソニーオープン・イン・ハワイ(Pro) CUT
- 2012/14 マスターズ(Pro) 54位T
- 2012/17 ボナラック・トロフィー(A) アジア・パシフィック代表チーム
- 2012/25 ミズノオープン(Pro) 43位T
- 2012/27 日本アマチュアゴルフ選手権(C) マッチプレーベスト16
- 2012/29 ネイバーズトロフィーチーム選手権(C) 日本代表チーム
- 2012/30 サン・クロレラ クラシック(Pro) 2位T
日本学生ゴルフ選手権を制し、プロの日本ツアーで優勝、2位タイという好成績。
そして世界ではゴルフのユニバーシアード大会にあたる世界大学ゴルフ選手権の個人と団体で金メダル。
世界のアマチュアのゴルフ大会で「エリート」というランクにあるアジア・パシフィックアマチュアを2連覇、そして世界ゴルフ対抗戦の日本代表チーム、アジア・パシフィック代表チームの一員に選ばれるなど、群を抜いた実績を残しました。
そしてこの世界ランク1位となった2012年には日本ツアー6試合で2位が2回、トップ10が4回(2位が2回のほかに4位Tと7位T)と、すでに2013年の大ブレイクを予感させる成績を大学3年生で残しています。
このようにかなり不利な環境にありながら、それをもろともせずに世界ランク1位となったということは快挙という以外に表現が見当たりません。
ここにマスターズにアマチュアで2年連続出場、さらにローアマが実績としてありますので、アマチュア時代からすでに世界のトップレベルだったことに疑いの余地はないと言えるのではないでしょうか。
このようなアマチュア時代の実績に加え、プロ転向からわずか3年半で全ての四大メジャーでトップ10、PGAツアーでもトップクラスのトップ10回数、90年代生まれでPGAツアー複数回優勝をしているわずか3名のうちの1人であることを考えれば、世界が松山英樹に注目するのは当然と言えます。
日本のゴルフ界にとって宝と言っても差し支えないほどの松山英樹の実績と実力を、日本のメディアが広く伝えてくれることを願ってやみません。
コメント
golfさんに拍手!
よくぞアマチュア大会に関してここまで詳細に調べてくださいました( ノД`)
ゴルフは本来プロよりもアマチュアである事が一つのステータスであったという歴史は忘れてはならない事でしょう。
その部分へのリスペクトがあまりにも日本では少なすぎると感じていました。
日本でゴルフが広まったのは高度成長期と共にと聞いております。
中部銀次郎など著名なアマチュアとして名を馳せましたが、そのことと日本でのゴルフの発展は違う道を辿ったように思います。
松山英樹へのその評価をいち早く指摘されたのは佐藤信人プロだったように思います。
「彼は真のエリートだ」と。
R&Aの松山への処遇などがそれを物語っていますよね。
50年に一度の逸材などとは思いません。日本で初めての逸材だと考えております。
golf さん
すばらしい記事の更新を有難うございます。
私自身、松山選手のファンになったのは、プロになってからですので、本当に嬉しい情報です。
日本は、当時から、常に一番でなければならない人がいたようで、報道規制があったなどの記事も読みました。
よがんだゴルフ報道の仕方が今の日本ゴルフをダメにした原因でもあるのではないでしょうか⁉
素晴らしい記録は、きちんと報道する。
当たり前のことがなされてないような気がしてなりません。
松山選手は今後も、数々の偉業を成し遂げていくことでしょう。
日本のマスコミ報道はあてにならないので、いつも、golf さんの冷静で正しい更新を楽しみにしています。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
良い記事ありがとうございます。
他のスポーツですと世界で良い成績を上げるとびっくりするほど
マスコミはアゲルのに、ゴルフはなぜか違いますよね~。
何年か石川遼に助けてもらってきたせいか
でも日本では遼は10勝しているとか。。。(それはそれで素晴らしいと思っています)
ちょっとレベルというか次元が違う話をしているというか
日本でどうというのではなく、世界でのゴルフの話であって、
ゴルフ報道にかかわる方たちにはもっとちゃんと報道してもらいたいですね。
まぁにしこりも全米で2位になるまではそれほどリスペクトされていなかったですし、野球・サッカー以外はオリンピック時以外は
あまり気にしないお国柄なんでしょうけど・・・
でも今までの日本のゴルフプレイヤーとは違う規格の人間が出てきたことは本当に素晴らしいことで、世界で真に戦えるプレイヤーであることを多くの人に知っていただきたいですよね~
KOMAさん、コメントありがとうございます。
アマチュア時代の実績ももっと報道されても良い内容ですよね。本当に規格外の選手だと思います。
今までの日本人にないスケールのプレイヤーであることは、青木功、尾崎将司、中嶋常幸のAONの3人が良くわかってくださっていて、温かく応援してくれていますよね。また世界でもタイガー・ウッズの後継者の一人として期待されているわけですから、そのスケールの大きさは日本人という枠組みを越えていると思います。
KEY- keiさん、コメントありがとうございます。
松山英樹のアマチュア世界ランク1位はもっと大々的に報道され、評価されるべきことだと思います。
特に日本というゴルフの先進国とはいえない環境で、これだけの実績を残せる素晴らしい選手が登場したことは、一番のビッグニュースだと思います。良いもの、素晴らしいものは正しく評価されてほしいですね。
日本人初の記録を次々と作ってきた男なので、メジャー制覇もやってくれると思います(^.^)
まきすけさん、コメントありがとうございます。
松山英樹のスケールは大きいので日本という小さい枠組みで見てしまうと、その凄さと大きさは見えなくなると思います(^.^)
彼の凄さは日本という小さい枠組みではなく、世界のトッププレイヤー達と比較した時にわかるものだと思います。
アマチュア時代の実績を見ても、世界で活躍することが約束されていたような選手だと思います。
現時点でも凄い実績と実力なのですが、まだ伸びしろだらけなので、本当に楽しみですし、このことを多くの人にも知ってもらいたいですね。